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普遍にして不変の名著エーリッヒ・フロム「愛するということ」の感想

      2016/12/14

エーリッヒ・フロム「愛するということ」1

「愛するということ」の概要

「愛するということ」(原題:The Art of Loving)は、ドイツの社会心理学者エーリッヒ・フロムによって書かれた「愛」を分析した書籍で、1956年に出版されました。
日本語訳版は、1959年に懸田克躬による旧約、1991年に鈴木晶による新訳が出版されています。
現代の日本人に馴染み深いのは新訳版で、鈴木晶の分かりやすい翻訳と美しい表現によって私たちの心にすんなり入ってきます。
ページ数はあとがきまで全て含め214ページ、文字も大きめでとても読みやすい本です。

エーリッヒ・フロム「愛するということ」2

こんな人にオススメ

恋人や友人を作りたいと思っている人。
今の人間関係に満足しているが、その感謝の気持ちをもっと言葉や行動でアウトプットしていきたいと思っている人。
恋人や家族、友人や同僚など、人間関係に悩んでいる人。
…いや、全ての人にオススメしたい普遍にして不変の名著です。

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「愛するということ」のあらすじ

全四章からなっています。

第一章「愛は技術か」

愛は技術であり知識と実践を持って到達するものであり、決して自分の条件を満たす相手が目の前に現れて「落ちる」ものではないと語られています。
音楽や絵画、大工仕事や医学や工学と同じで、多くのエネルギーを注ぎ、学びと習練を積んでこそ愛する技術を習得できると言います。

第二章「愛の理論」

愛の知識についてミッチリ書かれていて、この本の半分ほどが費やされています。
親子の愛、兄弟愛、母性愛、異性愛、自己愛、神への愛など、愛の対象別にも細分化されて書かれています。
歴史上の多くの学者や作家、芸術家や宗教家の言葉を引用しながらも解説されています。

第三章「愛と現代西洋社会におけるその崩壊」

フロムは「愛する能力はその社会に影響される」と語ります。
「愛するということ」は1956年に出版された書籍で、その頃の西洋の未発達の愛を批判しているのですが、全くもって現代の日本にも当てはまっています。

第四章「愛の習練」

技術の習練をテキストで行うことができない様に、愛の習練は積み重ねるしかないと言います。
ただし、しっかりと方法論は語られており、規律、集中、忍耐、関心、信念を持って、正しい愛の習練をする様に書かれています。

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心に刻まれる珠玉の言葉

エーリッヒ・フロム「愛するということ」3

読書をしていて心に刻まれるフレーズがあると、ドッグイヤー(本の隅を折り曲げる)をする人も少なくないと思います。
私も、たくさんの心に刻まれる珠玉の言葉に出会いました。
2回3回と読んでも、新しい学びや気づきがあります。
全体の文脈でないと分かりづらいものもあると思いますが、いくつか紹介いたします。

愛は人間の中にある能動的な力である

愛は人と人の間にある壁をぶち破り、結びつける能動的な力である。
愛によって人は孤独を克服し二人が一人になるが、依然として自分のままであり全体性を失わない。
(第二章 愛の理論)

愛するためには、性格が生産的な段階に達していなければならない

生産的な段階に達した人は、依存心、ナルシズム的な全能感、他人を利用しようとか、なんでも貯め込もうという欲求をすでに克服し、自分の中にある人間的な力を信じ、目標達成のためには自分の力に頼ろうという勇気を獲得している。
(第二章 愛の理論)

愛とは、特定の人間に対する関係ではない

ひとつの対象にたいしてではなく、世界全体にたいして人がどう関わるか決定する態度、性格の方向性のことである。
もし、一人の他人だけしか愛さず、他の同胞に無関心だとしたら、それは愛ではなく、共生的愛着、あるいは自己中心主義が拡大されたものにすぎない。
(第二章 愛の理論)

異性愛における排他性

たしかに異性愛は排他的である。
しかし、人は相手を通して世界全体を愛する。
性的融合、人生の全てに関わりあうという意味においてのみ排他的であって、兄弟愛を排除してはならない。
兄弟愛の排除された異性愛は、所有欲にもとづく愛着であり、利己主義が二倍になったものに過ぎない。
彼らは孤独を克服した様に錯覚するが、彼らは彼ら以外のすべての人から孤立している。
(第二章 愛の理論)

世界を知るただ一つの方法は行為である

思考によって究極の答えを知ることはできない。
世界を知るただ一つの方法は、思考ではなく、行為、すなわち一体感の経験である。
(第二章 愛の理論)

愛は、たえまない挑戦である

二人の人間が自分たちの存在の中心と中心で意思を通じあうとき、はじめて愛が生まれる。
愛はたえまない挑戦である。
活動であり、成長であり、共同作業である。
調和や対立だの、喜びや悲しみなどというのは、根本的な事実に比べたら取るに足らない問題だ。
愛があることを証明するものはただ一つ、すなわち二人の結びつきの深さである。
(第三章 愛と現代西洋社会におけるその崩壊)

人を愛するためには、謙虚さと客観性と理性を育てなければいけない

人を愛するためには、ナルシシズムから抜け出せている必要があり、謙虚さ、客観性、理性を育てなければいけない。
どういうときに自分が客観的でないかについて敏感でなければならない。
自分のナルシシズムによって歪められた主観的イメージと、それに関わりなく存在するありのままの他人の姿を区別できるようにならなければならない。
(第四章 愛の習練)

自分自身を「信じている」者だけが、他人にたいして誠実になれる

自分自身を「信じている」者だけが、他人にたいして誠実になれる。
なぜなら、自分に信念をもっている者だけが「自分は将来も現在と同じだろう、したがって自分が予想している通りに感じ、行動するだろう」という確信を持てるからだ。
自分自身にたいする信念は、他人にたいして約束ができるための必須条件である。
重要なのは自分自身の愛にたいする信念である。
つまり、自分の愛は信頼に値するものであり、他人のなかに愛を生むことができる、と「信じる」ことである。
(第四章 愛の習練)

愛するということは、なんの保証もないのに行動を起こすこと

愛するということは、なんの保証もないのに行動を起こすことであり、こちらが愛せばきっと相手の心にも愛が生まれるだろうという希望に、全面的に自分をゆだねることである。
愛とは信念の行為であり、わずかな信念しか持っていない人は、わずかしか愛することができない。
(第四章 愛の習練)

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NHKの「100分de名著」でも取り上げられました

「愛するということ」は、NHKの「100分de名著」(2014年2月放送)でも取り上げられました。
私がこの本を読みたいと思ったのも、この番組を観たことがきっかけでした。
ゲスト講師は、なんとこの本の新訳版で翻訳をした鈴木晶です。
ただ残念なことに、NHK番組のアーカイブが観れる有料サービスの「NHKオンデマンド」でも観ることができません。
他の回はあるのにとても残念です。
しかし、100分de名著のテキスト版は販売されています。

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